特集 バイオハザード ヒットの秘訣 (Page 1)

超人気タイトルの陰で胎動する次代のヒットブランド
「バイオハザード」は誕生から17年を迎え、今ではハリウッド映画やアミューズメントパークのアトラクション、飲食店等様々な展開がなされ、ゲームを遊ばない層にも高い認知度を誇るタイトルだ。しかし初代『バイオハザード』は、当時の新ハードであるプレイステーション向けに開発されていた実験作の1つにすぎなかった。更に、開発が始まった当時、カプコンには絶対的な人気を誇る「ストリートファイター」※が存在していたため、社内の期待もそれほど高いものではなかった。
社内外からの期待が高い「ストリートファイター」にはベテランクリエイターが多数集められた一方で、実績のない「バイオハザード」には若手ばかりが集められ、中にはゲームを作るのは初めてという新人クリエイターも多かった。
そのため「バイオハザード」に配属となった社員の中には”左遷”と感じる向きもあったが、新人クリエイターたちはそのような環境を意に介さず、文字通り1からゲームを作りあげた。
新ハード故、開発機材の不足に悩んだり、時にはチーム内で意見の不一致や衝突など試行錯誤を繰り返しながら『バイオハザード』の開発は進められた。
※1987年に業務用ゲーム機として登場した対戦格闘ゲームの金字塔。若い世代を中心にブームを巻き起こした。
カプコン初、自身初。初めてづくしの3D ゲーム開発
第一開発部 CS第一開発室 ディレクター 安保 康弘
カプコンに入社して最初に配属されたのが『バイオハザード』の開発チームでした。プログラマーとして、エンジンの制作などシステム周りを担当していました。当時、会社でも前例の無い初の3Dゲームの開発でしたから、過去の実績もないため”こうしたらこうなるだろう” といった予測ができなかったので、”プログラムを組んで実際に比べてみよう” といったやり取りが多々ありました。当時は新人でしたので、経験やノウハウはありませんでしたが、逆に先入観なく開発ができたとも言えますね。
『バイオハザード』は”怖いゲーム”
『バイオハザード』は1996年3月に発売された。お世辞にも期待の高いタイトルとは言えなかったが、無表情で振り向くゾンビや窓ガラスを割って現れるゾンビ犬などに代表される、ゲーム内に詰め込まれたあらゆる恐怖が徐々にゲームファンを惹きつけていった。
また、恐怖感を増長させるため、「バイオハザード」では変わった操作方法が導入されている。一般的なゲームの場合、コントローラーの右ボタンを押すとキャラクターは右に動き、左ボタンを押すと左に動く。しかし、「バイオハザード」の場合は、右ボタンを押すとキャラクターが時計回りに回転し、左ボタンを押すと反時計回りに回転する。こうしたラジコンのような操作方法で、思うように動けない、恐怖の中を進むたどたどしさを表現した。
因みに、『バイオハザード』は日本製のゲームにもかかわらず、登場人物は英語で話し、日本語は映画のように字幕で表示される。このハリウッド映画のような雰囲気も、ホラーゲームとしての緊張感を演出している。実は、日本語の音声も収録したのだが、”洋館を舞台にしたホラー”には合わないという理由でお蔵入りとなった。
インターネットや携帯電話が今ほど普及していない時代だったが、こうした細部までのこだわりが口コミで広がったことで、発売直後の20~30万本から徐々に販売本数を伸ばし、1年かけて100万本を達成した。
このヒットを受け、続編『バイオハザード2』の制作が決定する。当初1997年に発売を予定していたが、前作のヒットからくるプレッシャーのためか、想定していたクオリティのゲームが作れず、開発途中に全てをリセットし、最初から作り直すという思い切った決断をした。そのため、発売は1年遅れの1998年となったが、前作に比べ画面上に表示されるゾンビの数が増えたことや、プレイヤーのとった行動が物語に影響を与えるザッピングシステムなどが話題を呼び、現在までに496万本※を売り上げる大ヒットとなった。
この『2』のヒットを受けて制作された『バイオハザード3 LAST ESCAPE』でも、アクション要素の増加やプレイヤーを追い続ける新たな敵の登場など、先進的な試みが奏功し、累計350万本※を売り上げ、第1作から3タイトル続けてミリオンセールスを達成している。
※本数は2013年9月末時点のもの
ホラーアドベンチャー『バイオハザード』のこだわり
CS制作管理統括 竹内 潤
『バイオハザード』の開発時は入社4年目で、グラフィックリーダーを任されました。第1作目ということで手探り状態での開発でしたが、その分自分たちのやりたいことを詰め込みました。”銃から薬莢が飛び出し、地面に落ちると音が鳴る” というのは現実では当たり前のことですが、こうした細部までのこだわりに対し「これが次世代のゲームなのか」と高い評価をいただきました。



マンネリ打破のフルモデルチェンジ
『3』までの連続ミリオン達成により、ブランド価値を盤石のものにしたかに見えた「バイオハザード」だが、シリーズ創出から10年を経て、売り上げにも減少傾向が見られるようになった。”このまま続けていたらブランドが消滅する” そう考えた開発チームは『バイオハザード4』ではフルモデルチェンジを決断した。
しかし、フルモデルチェンジと言えど、「バイオハザード」の冠が付く以上、根本的な「らしさ」を失う訳にはいかない。開発中に企画が二転三転するなど、それまで「バイオハザード」で築きあげてきた「らしさ」の追求は困難を極めた。ホラーに寄れば前作と変わらず、ホラー要素を削りすぎるとそれはもはや「バイオハザード」ではない。開発チームにはこのバランス感覚が求められた。
試行錯誤の結果大きく変更されたのが、視点だ。それまでの俯瞰視点から、キャラクターの背後から前を見る”ビハインドビュー”を取り入れた。また、相手の弱点や特定の部位に狙いをつけて射撃ができる、海外で人気の”シューター”の要素も取り入れた。
この思い切った変更と、「バイオハザード」の持つホラー要素とが絶妙にマッチした結果、『4』はシリーズ屈指の人気作として評価されている。初めはゲームキューブのみでの発売だったが、その後プレイステーション2、Wii、更にはiPhoneやiPadなど、現在では「バイオハザード」シリーズにおいて最多のハードで展開していることがその証明と言えるだろう。
『4』で人気を博した要素は続編の『バイオハザード5』にも受け継がれる。光と影のコントラストをコンセプトに、それまでの薄暗いイメージから離れ、太陽のもとで繰り広げられる「バイオハザード」は、650万本※とシリーズ歴代最高の売上を達成した。
※本数は2013年9月末時点のもの
フルモデルチェンジのプレッシャー
CS開発統括 副統括 第一開発部 兼
第四開発部 部長 小林 裕幸
『バイオハザード4』にはプロデューサーとして参加しました。実は、『4』の開発前にゲームキューブで『1』のリメイクを開発しており、開発ノウハウに自信はあったのですが、人気シリーズのフルモデルチェンジということで「バイオハザード」らしさの追求という点では、ゴールが全く見えませんでした。外部への発表のたびにプレスの反応を聞かれるなど、チーム内も常に不安を感じていましたね。ただ、結果的に、どのメディアからも高い評価を得られたことは、その後の開発の自信になりました。

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