CFOが語る財務戦略 2024

CFOが語る財務戦略 ユーザー拡大と 持続的な成長のための 投資を継続 COMMITMENT 取締役副社長執行役員 最高財務責任者(CFO) 野村謙吉 CFOが語る財務戦略 ユーザー拡大と 持続的な成長のための 投資を継続 COMMITMENT 取締役副社長執行役員 最高財務責任者(CFO) 野村謙吉

ビジネスモデルの転換とネットキャッシュの状況

過去10年間の財務状況の改善

当社は、ユーザーをはじめとするステークホルダーの皆様のご理解とご支援により、2024年3月期で11期連続の営業利益増益を達成することができました。

次表のとおり、過去10年間で営業利益は5.5倍となり、ネットキャッシュも5.2倍となりました。収益面では営業利益率が27ポイント増加して37.5%に、また直近期のROEは24.4%と、4期連続で20%を超えることができました。

これらの要因は、デジタル販売強化への方針転換により販売国・地域が拡大し、過去に発売したリピートタイトルを長期的に販売することが可能となったこと、発売したタイトルの経過年数を考慮した適切なタイミングでの価格引下げにより販売本数増加に寄与したことなどがあげられます。

また、パッケージにかかる製造と販売コストも大きく減少し、売上高の成長以上に費用項目(売上原価+販売管理費)の増加を抑制した結果、原価率が低下し営業利益率の大幅な上昇に繋がりました。

加えて、アミューズメント施設およびアミューズメント機器のビジネスがそれぞれの課題を乗り越えて安定的に成長するフェーズに入ったことも、継続した利益確保とキャッシュの増加につながっています。

ネットキャッシュの状況

当社はこの3年間で従業員の報酬制度を変更し、総人件費を増加させつつ2023年度末のネットキャッシュは前年比237億円の増加を実現することができました。

直近9期の営業利益10%成長継続により、キャッシュは着実に増えています。当社では、事業投資について連結と主要事業の両面でROICの推移をチェックしていますが、直近3年間は連結ROICが50%を超える水準に達しており、主要3セグメントのROICも着実に水準を改善しています。また、個別タイトルのROI(営業利益÷開発投資額)をチェックしタイトル開発の収益性を管理しておりリピート販売の成長により各タイトルのROIは着実に上昇し、キャッシュの増加要因の一つになっています。

持続的な成長継続のための投資

ネットキャッシュが増加していることに伴い、今後の持続的成長に向けた事業再投資の選択肢が増え、何に投資していくかがこれまで以上に重要になってきます。

当業界の事業環境変化によりリスクも増大していることを考えると、キャッシュ管理において①事業再投資、②株主の皆様への還元、③従業員報酬の3要素のバランスが重要と考えています。

なお、③の従業員報酬については、CHOパートをご参照願います。

キャッシュの活用について
~現時点での事業再投資の状況

事業再投資には事業拡大に向けての直接的な投資以外に、生産性向上に資する従業員の働く環境の整備や福利厚生制度充実のための投資も含まれます。

開発投資額増加への対応

近年、開発投資額は年々増加し、この10年間では1.6倍になり、2024年度計画では500億円を超える見通しです。当社の開発陣はタイトル開発の効率化・生産性向上に不断の取り組みを行っていますが、それでもタイトルの開発投資額の増加は避けられないと考えています。

開発投資額の増加傾向の背景には、ゲームデバイスのスペック高度化等を受けたユーザー満足度向上への対応があげられます。当社ではタイトル開発に際し従来60ヵ月マップで全体観を見ていましたが、最近では追加コンテンツ等を含めると60ヵ月に収まらないケースも出てきており、中長期ラインナップの作成と進行状況のチェックを行い、中長期的な投資管理を行っています。

タイトル制作に際しては、過去の販売データを参考に開発規模を検討し、申請→承認という手順になっています。この手順の中で、中長期ラインナップとタイトル別ROIとROIC管理を主な参考指標として活用し、投資規模に応じた販売計画が連動して策定されています。

ただ、ユーザーの遊び方や好みの変化等に対応していく必要があり、この変化への対応がリスク要因となる状況は以前から変わっていません。

これらのリスク対応として、手元資金充実の必要性は変わっておらず、変化の対応への投資額の増加も確実に必要になってきます。

連結損益計算書項目

連結貸借対照表項目

販売国・地域と販売本数の推移

開発スペース増床への対応

人材投資戦略に基づき、連結全体の従業員数は毎年150名前後の増加が続き10年前比で1.3倍、5年前比では1.2倍と増加のペースが加速しています。特に直近3年間で開発クリエイターは約250名(約12%)増え、執務スペースの狭隘化という課題に直面しており、対応を急いでいます。一例として、すでに本社隣地を取得し、新たな執務スペースとするため建設を進めています。それ以外にも中長期的にみると、スペース確保に向けた事業用資産としての不動産投資が今後のキャッシュ面での大きなポイントの一つと位置づけています。

M&Aへの対応

新作コンテンツの安定供給のためのM&A投資も、開発力強化につながる案件を前提に実施しています。2023年度以降2件の開発関連会社の株式取得(子会社化)を実施しており、開発体制の拡充を図っています。クリエイター人材の成長には時間がかかるため中途採用の強化とともに即戦力としてのM&A案件を積極的に検討しています。

また、ユーザーの遊び方の多様化に伴い、今後はネットワークを活用したゲーム開発を視野に入れておかねばならず、さらに多方面にわたって新たな技術の導入が不可欠です。

アミューズメント事業への投資

アミューズメント施設事業においては、国内の店舗網強化により成果を上げており、今後もスクラップ&ビルドの前提で店舗網を拡大していきます。

また、アミューズメント機器事業においても、年間4筐体の発売という目標達成に向けて、体制を整えてきています。これらの事業は、これまで以上にゲームコンテンツの認知拡大、ブランド価値向上に向けて重要な位置づけになっています。

市場拡大への取り組み
~新興国・途上国のユーザー獲得強化

持続的な成長を継続するためには、当社ブランドを全世界に浸透させ、ユーザー層を拡大していくことが重要であり、当社IPを活用したライセンス事業や映像作品への投資を推進しています。ユーザーが触れやすいこれらの入り口を通して、当社のゲームを遊んだことがない方にも当社IPに触れていただく機会を創出することが狙いです。全世界でコンテンツの認知度を高めることで、当社IPのブランド力がより強固なものになると考えています。

また、ブランドの浸透には国や地域ごとの特性を把握して適切なマーケティングを行っていく必要があります。そのため、ユーザー動向を的確に捉えるための人材や組織、システム・ネットワーク構築への投資も行っていきます。

株主への還元

最後に、株主の皆様へは①利益拡大による企業価値の向上、②連結配当性向30%を基本方針とした安定配当、を基本方針とし、また株価動向や経営戦略の市場における理解等を注視し、状況に応じて機動的な自己株式の取得を行っていきます。

なお、2024年3月期の配当については、株主還元の観点から年間70円(配当性向33.7%)とし、前年の配当63円(うち創業40周年記念配当10円)からさらに増配しました。

次の表のとおり、当社の株価は当期純利益の増加に比例して推移しており、着実な企業価値の向上を遂げてきました。これからも株主、投資家の皆様との対話を通じて、ご期待に応える努力をしていきます。

コスト構造の変化

キャッシュフローの推移

開発投資と生産性

株主還元

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